日々の思考の積み重ね

家電メーカー企画マンの独り言ブログ

大手家電メーカーでの新規事業の起こし方 【事業立上げ編】

絶賛、大手家電メーカーの新規事業シリーズ、今回は事業立上げ編です。

過去は以下の記事を書いてきました。何と過去の記事から4年ほど経ってた。。

が、いまだに新事業(同じやつ)をやってます。

 

taitaitai.hatenadiary.jp

 

ちなみにザキオの現時点のステータスですが、

・大手家電メーカーでBtob新事業の立上げ&絶賛発売中

・立場としては事業立上げの起案者であり、マーケティング全般を見ている

・投資総額は2億以上、IoTプロダクトでプラットフォームを伴うサービスもあり。

 発売は'23年3月。

 

 

見て欲しい人は、

・ハードウエアを伴う新事業の立上げ推進者

・大型投資が得られていない、社内説得もできていない

・事業のシミュレーションが描けていない

です。

 

 

まず、事業立上げフェーズで大切なことは、大谷翔平のようなスーパスターを揺することではなく、あらゆる不足を補える主体性を持ったチーム作りが一番大切だと感じています。

開発をしっかり回しながら、お客様のマーケティング活動も同時並行でやって行くという、荒技。。

そのためには

開発を抑えるキーマン1名、そしてマーケティング全般をみるキーマン1名、少なくとも2名の情熱を持ったヤローどもが必要だと思います。(流石に一人で開発とマーケ全部を見るのはきつい。。。)そういう前提のもと、私が立ち上げの時に感じたことを一つづつ、話していきたいと思います。

 

 

まず、

①HWの新事業で製造原価ほど怖いものはない

HWの新事業で起こる問題 No.1は製造原価の上振れです。

平気で当初の製造原価の2〜3倍になることが起こります。

これはもうしょうがない。工場選定タイミングなどでは、どうしても開発仕様も詰めきれていないし、工場側も受注を取りたいから頑張って安めの原価の見積もりを出してきます。

この見積もりを前提に事業のシミュレーションを行うと確実に失敗します。

なので、マーケティングサイドは必ず、原価が上振れをする前提で、

事業の成立要件を考えておいてください。

 

かくいう私の場合も、4年前一度商品化をしましたが、あまりに原価が高くなることが判明して、構造を0ベースで再開発することにしました。

結果何年もの月日を要してしまうわけですが、これがスタートアップだったら一撃アウトで潰れてましたね。大企業の資本力があるからこそ何とかやれてましたが。。

 

②顧客採用意向価格は経営者と話をしろ

こうなると今度はこの商品の採用意向価格は正確に把握する必要があります。

しかし、これがまた難しい。

なぜかというと聞く人によって採用意向価格は千差万別。

まるで、駆け出しのお笑い芸人の評価みたいに、高い人はすげえ高いし、全く興味ない人はボロカスに言います。

これはこれでしょうがない。何をすべきかというと、

とにかく数を稼いで(少なくとも30社)、なぜ採用意向価格が違うかの傾向を出して行くのが早いです。

人が意思決定をするときは確実にその裏には何らかの比較があります。

そして比較をする商材は、その利用する文脈に起因します。

 

例えば私の場合の商材でいうと、採用意向価格の違いは、以下の傾向がありました。

・高い  :コミュニケーション媒体として活用を期待

・中くらい:空間演出商材として活用を期待

・低い  :情報表示端末として活用を期待

 

富士山で売られている水のように、ある人の文脈ではとっても高く評価してくれる市場がありますし、逆にそれがない商品はやめた方が良いかと思います。

ある程度傾向がわかってくると、最も高く評価してくれる市場に絞ってマーケティング

策を取って行くのが良いでしょう。

 

また、この採用意向価格を判断する際に、

しっかり現物を見せて、利用シーンを想起させ、価格の話をしてください。

この工程を行なっていないと、採用価格は低めに出る傾向があります。

また、価格の伝え方ですが、

「いくらだったら買いたいですか?」戦法よりは、

「これくらいの価格で考えていますが、如何ですか?」の方を

私はオススメしています。

結局前者でアプローチをすると、戦法に主導権を握られるので、

結局商談になった際に不利になります。

あと、だいたい自分の期待する価格になるケースは低いです。

 

 

 

そしてできれば会話をするのは意思決定社である経営者がオススメです。

経営者ははっきり金額を伝えますし、決まれば早いので、すぐに採用してくれます。

 

経営者とつながりがない!

という方はとにかくつながりを増やしてください。(どうやって?)

世の中には経営者が所属する団体やコミュニティがたくさんあります。

自分の力でそのコミュニティに潜り込んだり、そういった方達が集まる展示会に出展するなどで、頑張って関係を作ってください。死ぬ気であれば何らかの方策が必ず出てきます。

私の場合は、宿泊施設をターゲットに設定しているので、

経営者が集まるコミュニテイを調べ上げて、その人たちが集まる展示会に積極的に参加していました。

 

③勝ち筋は存在する

勝ち筋は存在することは私も最近やっと肌感覚でわかってきました。

このパターンでいくと、お客様は確実に高い評価をしてくれる、というパターンです。

ここに到達するまでに100社以上のお客様と商談を重ねてきました。

そして、勝ち筋は「お客様が教えてくれる」ということでした

当初自分たちがメインの使い方では想定していませんでした。

 

また、新規事業を立ち上げたことがない人の意見は基本無視してください。

彼らは既存の考え方でビジネスの可否を伝えてきますが、根拠がないケースが多いです。

ファクトをベースに会話をして行った方が良いです。

 

また、勝ち筋を作るためには複数のお客様にヒアリングをして行くケースがありますが、

N=1で、これは面白い!と行ってくださる方がいた場合は、

その顧客属性と似ているお客様に同様にヒアリングをして行くと、傾向が見えてきます。(少なくとも5社)

イメージは、10箇所穴を掘れるとしたら、まずは3箇所ほって見て、

反応が良かったところの周辺を追加で7箇所掘るイメージです。

 

 

④無理をして掴みにいくべきタイミングがある。

新事業を行なっていくと、ほぼ毎週無理をしてでも掴みに行く必要が出る仕事が出てきます。例えばクソ忙しいのに、新しい販売プロモーションを仕掛けようとして、

社内の法務に邪魔をされたり。

通常のステップでは納期が間に合わないので、今まで全く頼んだことがない業者に依頼して、

納期を間に合わせたり。

ここでは思いっきし無理をして取りに行って欲しいと思います。

結局、難しかったりあまり人やっていないことほどハードルが上がるのですが、

そのさきに行けばいくほと宝があるケースが多いと思います。

 

私の場合も、当初は社内の商流に頼って顧客開拓を進めようと思っていました。

しかし、全くターゲット企業との親和性がなく、新しい販促手法を取る必要があり、

DM &テレアポ施策を行うことにしました。

これが顧客情報を得る云々で結構めんどくさく、大変だったのですが、

これで上客を結構つかめることができ、宝を掘り当てることができました。

 

⑤愚痴ではなく、なんて自分は幸せなんだというマインドセット

普通の仕事に比べて、新規事業はわりにあいません。

大変だし、社内からは疎まれるし、評価は上がりにくいし。

でも、そんな中で唯一他のみんなと違うこと、圧倒的に誇れることは、

「自分が心からしたいことをやれていること」です。

これほど人間として、素晴らしいことはあるでしょうか?

新規事業は自分が心から実現したいこと以外はやるべきではないし、

出ないと、成功しないと思います。

気持ち高らかに、なんて自分は幸せなんだろう、今日もみんなありがとう。

と私は毎日心から感じています。

 

 

 

 

以上、またいつか体系的にまとめていきたいと思いますが、今日はこれくらいにしておきます。

HWの新事業を立ち上げる方は頑張ってください。

くれぐれもその辺の他社商品を買い入れて、それをシステム的に組み合わせて、新事業、とは言わないで。

自分たちが全く新しいHWを開発してください。

HWが変わることで、初めてSWが変わります。