なぜ目先の仕事に我々は追われてしまうのか?
昨日、元部署の同期のデザイナーと飲んでいた。
話題に上がったのが、私が7月までいた商品企画の部署の
問題点である。
デザイナーの彼曰く、今の商品企画は短期的視点でしが、企画ができていない、と。
他社があーだから、営業がこーいってるから、こう仕様変更しよう、等のくだらない企画が多く、
ユーザーに特段メリットがないブラッシュアップばかり行い、無駄に人員の工数と金を使っており、終わっている。
もっと新しい企画をしろボケー!という内容であった。
彼の話を聞きながら、素直に反省した。
自分もそれに関しては、ずっと思っていたことだが、いざ内部に入ってしまうと、そのような企画しかできていなかったな、と。
今、私に商品企画の全権を担わしてくれたら、
そんな不満を吹き飛ばす、長期的ビジョンを持ったロードマップを作成できる自信はあるが、そのようなスキルもなかったのが、2年ほど前の私である。
(基本的に商品企画は2年前くらいから、企画を始めるため、来年度を憂いても時すでに遅しなのである。)
しかし、このような私の会社の商品企画は特別ではなく、おそらく多くの日本のものづくりのメーカーでこのような状態が起こっていると推察する。
皆、頭のどこかでは分かっている。
「こんなユーザーからしたらよく分からない仕様変更ばかりやっていて無駄だな、もっと夢のある新しい企画をしないとうちの会社やばいんじゃねえか」と。
しかしできない。
気がついたら、目の前の仕事に追われており、とにかく新商品を出すことが目的となってしまっている。
今日はこの件に関しての本質的な問題について語りたい。
■まず論点の整理
では、そのような事態から脱却するためには、何が必要なのか?
私が考えるに以下二つの要件が必要である。
(1)夢のある長期的ロードマップを描くこと
(2)その長期的ロードマップを実行すること
おそらく日本の企業は(2)は得意分野である。
日本人はやることが明確になっていると、実直にそれをこなす能力は非常に高いと感じている。
現に私がいた元部署の開発さんも与えられた目標をこなすことは非常に優秀であった。
そう、問題は(1)なのである。
長期的ロードマップがないのだ。もしくは、あっても今までの延長線の企画でしかないのである。
ではなぜその長期的ロードマップがないのか?
もう少し問題の構造を分解すると以下の論点に分かれる。
①そもそも考える気がない
②考える気はあるが、方法orスキルがなくてできない
③考える気もあって、スキルもあるが、何かしらの制約(時間or周りの空気)があってできない。
私の元部署の話になってしまうが、①の可能性は低い。
一応長期的なロードマップを描く必要性は皆認識しており、それに取り組んだプロジェクトやワークショップはしょっちゅうやっていた。
そして、③も上記の内容を踏まえると、可能性は低い。
そう、問題は②なのである。
方法論がわからないのだ。
どうやって魅力的なロードマップ、つまり全体戦略を考えたら
良いのか?その方法論がないため、皆取り組むことができない。これが私が思う問題の本質である。
■ではどうしたらその方法論を組み入れることができるのか?
方法論を組み入れる前に、まずは戦略、ロードマップを考えるとは一体どんな思考が必要なのか?
そこから議論したい。
基本的に、長期のロードマップを作り上げるには、長期的な戦略が必要であるが、実は戦略はシンプルな構造をしている。
個人的には以下の3要素から戦略的思考は成り立っていると感じる。
(a)戦略の目的の設定
(b)どこで戦うか?戦場の設定
(c)どうやって勝つの?戦い方の設定
これまでの自分の経験上、大体長期のロードマップを考えるときは、いきなりアイディア出しをやってしまう、つまり(c)を行ってしまうケースが多い。
そして、多くの場合(a)と(b)の要素が抜けてしまったまま進めてしまっているのだ。
そして、我々ジャパニーズメーカーが下手くそなのがこの(b)の思考なのである。というかその発想すら持ったことがない、人がほとんどなのだと思う。
どこで戦うか?これを意思決定するためには、様々な情報が必要である。
各セグメント別のマーケットサイズや成長率、他社の市場浸透率や強みの把握、さらには当社の使える資源や得意分野、強み技術、あらゆる要素を踏まえて、最も目的に対して効率的に成果をあげる場所を選ぶ、判断が必要なのである。
しかし、多くのメーカーではこのような意思決定ができていない、と思う。一部の優秀な企画マンがいたらその人の思考に頼ることができるが、
大概大企業は部長たちが方向性を決めており、
部長たちはそのようなマーケティング思考が必要ない時代で会社人生を送ってきた人たちのため、そのようなスキルも有していないのだ。
逆に、ここをうまく方法論として確立し、社内に浸透できたら、企画精度も上がってくるのではないか?
そう感じる次第だ。
そこで下記のような簡易な戦略設定確認フローを作ってみた。
(PC画面の撮影で申し訳ないですが)
このフローには(a)(b)いずれの要素も入っており、
共に問題がなければ無事(c)のフェーズに進めるようになっている。
戦略的思考の最大の課題である(b)をこのフローで(c)まで進めるように何十回とぐるぐる回し、情報を集めて、思考を練る、ということを繰り返すことで、良い(b)が考えられる。
もちろん(c)のアイディア出しも重要であり、ここで頭を絞ることで、魅力的な商品アイディアが生まれ、ひいては長期のロードマップ作成につながるわけなのです。
ただし、その(c)を行う前に、(a)(b)をしっかり設定しておくと、自社の資源を有能に活用でき、効率的に目的達成ができる戦略を作れる、そういうわけでありました。
こういうことを本来の企画マンは何回もやるべき。
(そのうちAIが自動でこういうことをしてくれるといいのになーと思いつつ、
AIが普及するとそのうち商品企画もAI同士の対決になるのもしれない。)
自分のこの考えは完璧だとは思っていないが、これまで全く戦略的思考をやって来ずに企画を行なってきた人たちにとっては、仕事の成果は高まる一助にはなると思っている。
もちろん、この戦略が完璧にできても実行フェーズで問題は多々起こる。
しかしそれは当人のリーダーシップや経験、知識、などで補える部分もあり、結構気合が大事だったりすると思っている笑
といういつも通り自分の思考をまとめるためのブログでした。