なぜチェキがヒットしているのか?チェキに惚れる現代人のフロー特性について考えてみた
今日は某家電量販店によったのだが、
そこでついつい衝動買いしてしまったものがある。
「チェキ」だ。
前から欲しかったのです。チェキ、だってその瞬間を切り取ってくれるってめっちゃエモくない?逆に、その楽しかった思い出を一瞬で過去にしてくれるってエモキツくない?
んで、来週は同期の送別会があるし、今子供もちっちゃく可愛いから、
これからめちゃめちゃ活躍するんじゃなかろうかと思い
買ってしまいました。
お値段は八千円くらいでかなり安かったし、使うのが楽しみですな。
んで、自分がチェキコーナーを去る瞬間に別の子連れのお母さんが入ってきて、
「チェキかわいい〜」と言っていた。
わかる、確かにチェキって可愛いんだよ。まずフォルムが可愛い、四隅の丸みや低めに位置するレンズ。
特に四角型のタイプなんかはたまらん。めちゃめちゃbaby schemaを刺激してくる。
baby schemaについての考察はこちら
で、ちょっと色々考えていた。なぜこんなにもチェキに魅力を感じてしまうのか、
もちろん僕だけじゃない。
特にミレニアルに受けてるんだ、こいつ。
今の時代の何かが、我々現代人のチェキ欲するトリガーを間違いなく刺激してると
思うわけですよ。それを今日は考えたい。
①チェキの魅力とは一体何なのか?
チェキの最大の特徴はその瞬間をすぐ現物の写真にできることだ。
スマホ写真でも撮影し、その瞬間を記録はできるけど、デジタルの保存であり
物質としては残らない。
物質として手元に残らせることができることがチェキなのですよ。
じゃあ物質だったら何が良いのか?
例えば、
・そこに手書きでメッセージが書き込める。
・映像が現像されるまで時間がかかり、その出来上がりをワクワクしながら待つことができる。
・できた写真はフォトジェニックでインテリアとしても使えるし、
部屋の見える場所に置くことができるので思い出が想起されやすい。
など、友人との感情の共有を刺激する体験を得られるのです。
んで、色々あるこのチェキの良さ、色々、ある、が、
僕が感じるチェキの最大の魅力は、
「時間は有限でありこの瞬間はもう戻ってこない過去になっちゃったよ」と
いう哀愁感を僕たちに漂わせてくれるところだと思うのですよ。
これほんと不思議なんですよ。
だって、普通のスマホで撮った写真だったら、そんなことを感じない。
自分がうまく写っているか、綺麗に取れているかだけをチェックし、
「あとでみんなにLINEで共有するよ〜」で終わりだ。
でもチェキを使って撮影し、みんなで確認すると、
「あ、なんか切ない」という気持ちにさせてくれる。
これを論じるには、人間の体験のフローとストックについて述べなければならない。
②フローとストックとは?
僕は大抵のものはフローとストックに分けられると思ってる。
僕たちの日常の行動もそうだ。
たとえば僕たちの日常はほとんどフローであり、その行動のほとんどは毎日のルーティンとして過ぎ去ってしまう。
この場合のフローとは流れ去ってしまうことであり、記憶としてほとんど覚えていないことである。3日前の食堂の昼飯のようなものだ。
まあ定義を割とはっきりするなら、短期記憶にしか残らず、長期記憶には残らないものであるとしよう。
一方、ストックは結構はっきり記憶に残る体験だ。
刺激に渇望する現代人がストックを求めるのは当然のことである。
んで、この日常の体験を、フローからストックにレベルアップさせる一つのトリガーは希少性、有限性である。
例えば、高校卒業前の最後の数週間、部活を引退する前の最後の練習、転職する前の最後の日の職場で過ごす時間、実家で食べられるご飯、老い先短い祖父母と話す時間。
これらは何気ない日常とそんなに変わらないのに、突然と輝きを感じた気はしなかっただろうか?
これは全て有限性、希少性が備わっており、それを脳が価値がある、と感じてしまい
特別な感覚を味わっているからだと思う。
でも今の現代人は希少性を感じることが少なくなってきた、
それはあらゆるものの限界コストが下がってきて、安く何でも入手できるからだ。
さらに現代人が浴びる情報は圧倒的に増えている。
これらより、僕らの行動はフローな行動の比率が増えている。
例えば日常のニュースに一喜一憂してる感覚が弱くなってきた気はしないか?
だいたいタイトル見て何となく雰囲気を掴んで終わりだ。
スマホの写真なんかみんな腐る程持っているが、それを感慨深く見返すことなんて年に数回だろう。無料スマホアプリも腐る程DLして、一回使ってすぐアンインストールすれば良い。
僕も昔、毎週「プレジデント」という雑誌を買っていた。
しかし、途中でDマガジンを購読し、それでプレジデントが他の雑誌と一緒に読めるので、プレジデントの購入をやめた。しかし何が起こったかというとプレジデントをDマガジンでも読まなくなってしまったのだ。
毎月五百円で様々な雑誌が読み放題になってしまうと一気に自分の中であらゆる雑誌の価値が暴落してしまったのだ。
では、このフローが増えれば増えるほど何が起きるか、そう、
ストックが欲しくなるのだ。
チェキはフローな日常をストックに格上げしてくれるのだ。
なぜか?
それは、チェキは恐ろしいことに、その瞬間を否が応でも切り取ってしまい、その瞬間を過去にしてしまう。フローとして流れていた日常の時間を急にぶった切られて、思い出の1ページにされてしまうのだ。
今まで時間がフローとして流れていたのを、
急に過去・現在という断面図で見せられると思わず未来に対しても考えてしまうものだ。
チェキを撮り、現像を待ち、メッセージを書き込みながら、
「あと何枚こんな写真が取れるのだろうか」という未来への有限性を感じるため、
ストックにレベルアップする。
チェキで写す友達との旅行は、フローからストックへと掛け替えのない有限な時間に
しれくるのよ。
昔では日記がそれにあたるし、最近ではSNSがそれに当たっていたが、
リアルに見せつけるチェキは現代の新たなシェアリング日記とも言える。
③なんで人間は有限なものに価値を感じてしまうのか?
というか有限なものに価値があると感じてしまうよう設計されているとさえ感じている。
多分だが、二つの側面がある。
希少性を通貨として扱ってきた社会の仕組み、
もう一つは知識の共有が生存格率を高めるための手段だったからだ。
古来から人間は通貨として希少性のあるものを使っていた。珍しい貝殻やなかなか手に入らない石など、で、このクソ昔から人間に備わってきた希少性があるもの=通貨であり、通貨=価値があるもの、なので、どうしても有限性などの終わりが見えると希少性を感じてしまうのだ。
また、村人コミュニティにおいて古くから年齢が高い人は知識を持っており、その知識は村の生存確立を高めるためのツールであった。しかし年長者の寿命は短い。
寿命が短いこと、有限性があることを大切にしなければならないというのが
本能レベルでインプットされている気がする。
④チェキとこれから
さあチェキの話に戻るが、チェキのもう一つの特徴は現像フィルムが有限であることだ。現像フィルム、数が少ないくせに高いのね。
でも凝ったデザインのいろんなフィルムがあって、それがまたその瞬間の希少性を増大させてくれるツールにうまくなっているのよね。
一方僕は、今ではDマガジンをやめて、毎月気に入ったざしを単品で自分で購入している。
そんなことを考えていたら、これからの時代のビジネスが見えてくる。
ポイントは、今完全に世の中に溢れてしまって価値が暴落しているもの、
それらを有限性を刺激させる新たなパッケージングが価値を帯びてくることだ。
例えばニュース。
昔ニュースは新聞を買わなければ読めなかったが、いまはスマホを開くだけで無数のニュースが腐る程読めてしまう。
結果どうなった?おそらくみんなニュースなんてタイトルだけ見て読むのを辞めてしまっているのではなかろうか?
これもニュースの価値が暴落しているからだ。
じゃあ今の時代の求められるニュースは?
僕だったら、僕が選ぶ世界のニッチなニュースを非常に丁寧に解説し、読み応えある内容をお届けるする。
その5本を販売してしまえば良い。必ず一定数の需要はある。
他には、祖父母との会話を録音して、それを祖父母の好きな曲のオルゴールにして
途中の間奏でその録音を流すなんかも良い。
フローが溢れかえる現代において、ストック体験へと昇華させるツールとなった
ことがチェキヒットの要因であり、
今後新たなパッケージングスキルが新ビジネスを考える焦点となると思った。
みなさん、チェキでストック体験を作っていきましょう!
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