新人の社員に、
「入社して高めるべきスキルはどんなものが必要ですか?」
と聞かれたら、目的思考、と答えるようにしている。
なぜなら目的思考は仕事の成果を高める劇薬であり、
人生のベースにもなるスキルだからだ。
目的思考がない人間は、
タイトルがわからない小説を読み続けているようなものである。
受け取る情報の質が悪く、
打ち手も場当たり的であり、短期的であり、狭い思考に陥ってしまう。
他方、目的思考がある人は、
作者は村上春樹で、題名はノルウエーの森だとわかった上で、
読書を行うことができている状態だ。
つまり、しっかりと輪郭を理解した上で、
長期的な視野に立った上で、適切な打ち手を行うことができる。
以下、目的思考がどのように仕事の成果につながるか、一例をお伝えする。
①目的思考で仕事のアウトプットが変わる。
例えば上司に
「新商品のお客様説明用の資料を提出して」と言われた時に、
目的思考がある人は、上司にその目的を明確に確認することで、付加価値を作ることができる。
たとえばその目的が、
とあるベンチャー企業との業務提携を検討しており、
その際に自社の紹介商材の一例として、新商品を紹介する。
となった場合は、
そのベンチャー企業の戦略やプロダクトを調べて、自社との提携スキーム案を検討した上で、
どうやったら新商品がそれに役立つか、という観点で情報をまとめ、上司に提出を行うだろう。
しかし、目的思考がない人は、
依頼した要件を返答するだけで、付加価値はつけにくい。
②目的思考でルールを疑う力が身につく
例えば、ある商品仕様を設計する上で、とある構造に対して、
品質が絶対だめ、と言ったとしよう。
なぜ?と問うと、
「それは社内のルールだからです」
では、社内のルールは何のために作ったのか?
これが目的思考ができる人の考え方だ。
そのルールを調べていくうちに、
なぜそのルールが作られたのか、そしてどのようなことを懸念されているのか、
が理解できると、
その懸念事項を回避する、特別ルールを設定し、今回の構造は成立できるような話ができてくるかもしれない。
③目的思考で時間管理力が高まる
スケジューリングも目的思考の塊である。
その1時間を何を目的に過ごすのか。
例えばある業界の情報を調べる。
しかし、その情報をただのインプットを目的にするのは質が低い。
友達に明日話してみよう、と目的を変えるだけで、大幅にインプットの仕方が、変わる。
④目的思考でマーケティング力が高まる。
店舗のスタッフとして、飲食店の売り上げアップを考えるとしよう。
その時、多くの人は
お店のメニューの値段を下げよう、とかバリエーションを増やそう、とか
手段に終始してしまう。
しかし、目的思考の人は、なぜそのユーザーが店舗にやってくるのか、というユーザーの目的を深く考える思考ができる。
そうすると、そもそものブランド認知を変えよう、とか
違った発想が出てくる。
また、お店のキャッチコピーなんかも目的思考が問われるいい例だ。
たとえば、アパレルショップで季節商品を販売するときも
・目的思考ができない人は、「10%半額セール」
・目的思考ができる人は、
「芸術の秋!秋の可愛い着こなしで美術館デートに行こう。」
などのようにユーザー体験を意識したキャッチコピーが打てる。
⑤目的思考で交渉力が高まる
相手の目的を理解することで、コミュニケーションの目的も変わる。
交渉も基本的には、どこまでお互いが譲歩をするカードを出し合うかのゲームである。
自分たちの交渉で獲得しうるギリギリのラインを見定める、そして相手のラインも見定めることで、余裕を持った交渉が可能になる。
以上、いくつか挙げさせていただいたが、
この目的思考の良い点は、基本的には自分次第でいかようにも目的を設定できるのである。
目的の設定次第で、あらゆる仕事の成果を高めることができる、ひいては日々の行動も変えることができる、ことなのである。
そしてその心持ちを新人時代から身につけておくだけで、
10年後に大きな差が生まれることは間違いない。