【書評】人類を前に進めたい
猪子さんのことは随分前から知っていたし、
毎度彼の取材や特集記事には目を通していた。
今回、初めてまとまった文章として読めるこの本にも非常に興味があった。
そして読み終えた感想、驚愕である。
猪子寿之という巨大な哲学者の思考スケールに驚愕した。
TeamLabの作品がなぜこれほどまでに人を魅了するか?
それは彼らのビジョンが唯一無二だからだ。
例えば、もしTeamLabのビジョンが
美しい空間を作ってみんなを驚かせたい、
のような稚拙なものなら、あの空間は生まれない。
TeamLabには強烈なビジョンがある。それは
「物理的には自分の肉体と世界には境界があるが、
実は世界と自分や他者は連続していること」
だから、作品においても
・作品や空間の境界を無くし、自分が空間の一部に感じること
・他者によって作品が変化し、他者と自分の関係が自然とポジティブに感じること
・何億年という生命と自然のスケールを作品を通じて感じ、
自分という存在は長い地球の年月の一瞬であると感じさせる
など、強烈なコンセプトの作品を考えることができる。
だからそんじゅそこらの空間デザイナーは太刀打ちできない。
そもそもの思想の器が琵琶湖と太平洋レベルで違うのだ。
この書籍で、対談者の宇野さんが
「チームラボの作品は美しいものを見せるというわけではなく、美しい関係性を体験させている」という。本来不快なはずの他社の存在がチームラボの作品では面白さに変わる。
これがまさにチームラボの作りたい新たな美の価値基準なのだと思う。
新たな市場を創造するためには、これまでの価値基準を変える必要がある。
その一つがアートであり、チームラボはアートという切り口から挑戦している。
さて、自分はどんな切り口で勝負を仕掛けるべきか。