日々の思考の積み重ね

家電メーカー企画マンの独り言ブログ

大企業での新規事業の起こし方【社内説得編】

年末です。

 

今年が終わる前に、どうしても書き記す必要がある内容がありました。

それがタイトル「大企業での新規事業の起こし方【社内説得編】」です。

 

私が長年取り組んで来た新事業も、今年の9月についに、

社内承認を得ることができ、商品化するための大型投資が確定しました。

この社内承認を得ることは最も難しく、生臭い話でした。

だから、だからこそ記憶の温かいうちにこのブログに記し、

もし世界のどこかに新事業に奮闘している人がいたら、参考になったら嬉しいです。

 

1.そもそもなぜ多くの新規ネタは事業化できないのか?

これには明確な理由があります。

 

それは

⑴上の立場:何を条件に決裁起案の承認したら良いかわからない

⑵下の立場:提案を通すスキルが低い

 

 

だからです。

 

だいたい新事業のステップとしては、

①アイディア出し→誰でもできる

②PoC 〜ブラッシュアップ→誰でもできる

③投資決裁→ここからがむずい

④事業化(ローンチフェーズ)→ここもむずい

⑤事業化(スケールフェーズ)→もっとむずい

 

になります。

ぶっちゃけ誰でも②までは行くんです。

しかし、③の投資決裁もらうのが実際くそ難しいのよ。

それは②までは引き返せるが、④になると世に商品を出すがゆえ、

もう賽が投げられるからです。引き返せないからです

 

商品開発にはPoCに比べ10倍以上の開発費用がかかる上、

ローンチ後のカスタマーサポートや、修理対応の部材管理など向こう5年以上

継続的に金がかかります。

必然的に上司の判断も慎重になります。 自分達は新事業したことないし。

大企業であればあるほど、リスクを嫌がります。

だから上司達は事業決裁の条件をあやふやにします。

決めちゃったら取り返しがつかないし、そもそもそれを設定するだけの情報が

上司から見えてないからです。

 

 

だからこそ、私たち新事業立ち上げの使命を負った人間は、

 

まず、上司の立場としてあやふやにしたい

「投資決裁の承認条件」に対して、

 

「何がどうなったら投資決裁のOKをもらえるか」

ここの擦り合わせに命をかけるべきです。ここが戦略の焦点でごわす。

逆にこの擦り合わせができたら、社内説得の仕事の9割は終わったも同然です( ͡° ͜ʖ ͡°)

なぜなら、あとは淡々とその条件を満たすための機械的な作業に入るからです。

 

ちなみに自分はB to Bの商材ですが、

・ある程度規模のでかいお客様から受注をもらうこと

・開発投資金額は***万円以内にすること

でした。

 

ここを引き出すのがすごい大変だったが、、、

 

その条件を引き出すために、三つのフェーズで社内を攻めていきましょう。

勿論ターゲットは投資決裁に関わる上司達です。

①魅力伝達フェーズ

②信頼性構築フェーズ

③投資決裁条件引出しフェーズ

 

①魅力伝達フェーズ

このフェーズのポイントは、その事業新が立ち上がることで、

今の自社の事業にとってどれだけ意味があるか、を説明するに尽きると思います。

時期としてはアイディアフェーズ〜PoCフェーズです。

新事業での売り上げなんて正直既存事業に比べたら1%程度もなくしょぼいもんです。

それよりも、この新事業で既存事業の弱点領域をカバーできるので、

うちのビジネスモデルにとって将来的にこんなことができまっせ、

を雄弁に語るべきだと思います。

この時事業担当者は、

自社の戦略の目的、目指すべき姿、弱点をしっかり把握しつつ、

いかに自分のしたい新事業が自社の戦略上 重要な橋頭堡になるか、

そこに思考を注ぐべきかと思います。

逆にここは自分の事業の実現したいこと全てを語るのは我慢すべきです。

あまりにもビジョナリーなプランを語ると決裁者のおっちゃん達は理解できず、

夢物語に聞こえてしまうからです。

自分の事業のエッセンスだけを抽出し、既存事業とのシナジーを中心に語る、

これが大切なことは決裁者の人たちは常に既存事業の成長戦略も考えなければならないからです。

また同時並行的にいろんな新事業も走っています、

その中であなたの新事業だけが既存事業の成長戦略にも大いに貢献するなら、

あなたの事業を優遇するのは火を見るよりも明らかです。

 

②信頼性構築フェーズ

魅力を伝えるだけではダメです。

自分もやってましたが、早い段階で机上の事業シミュレーションや実証実験計画を持って行って、

「このスケジュールでこんな実証を行って、こう言う結果が出たら可能性があるので、

 5000万円の投資をお願いします!」と言われても、上司は、

絶対YESと言いにくいですよね。

なぜかと、「その事業の信頼がないから」です。体温がこもってないのです。

 

だから我々は事業としての信頼を上司との間に築く必要があります。

試作機の実機が出たら現物を見せる。

実証実験の結果が出たら報告する。

お客様の些細な引き合いがあっても報告を行う。

毎回、ちょっとずつ事業に対する信頼を築いて行く必要があります。

めっちゃ泥臭いし、いかにも大企業的な考えですが、こう言う泥臭いことが結局

効いて来ます。結局判断をするのも人、なわけです。

我々の新事業も細かな報告しかり、金の話然り、決裁の話をするまでは信頼構築と

上司のアジェンダ&人間性把握、が最も大切な仕事でした。

また、この時点では投資金額や企画台数の根拠、投資回収シミュレーションのすりあわせもちゃんと行います。

特に企画台数の根拠は毎度悩むポイントですが、

「似たような商品の販売台数」から算出するのが最も良いです。

よくあるのが、マーケットサイズと目標シェアから出すのが多いですが、ブレ幅が多いです。

似たような商品⇨自分の新事業が代替する市場

ですが、この数値をなんでもいいから頑張って入手しましょう。

情報は必ずどっかに落ちています。それくらいの努力は当然。

こうした泥臭いことをやり続けて、

徐々に上司の評価も変わって来ます。

 

 

③投資決裁条件引出しフェーズ

そして、ある程度、信頼ができたタイミングでついにこの話を切り出します、

「お客様からの評価も大好評。実証実験での結果も出ております。

 で、何ができたら事業化の投資決裁を頂けますかね?」

そもそもこの話は①と②のフェーズをクリアしないと土台できません。

そしていざその条件を明示してもらう上での、 必殺技ですが、

必ず事業プランを三つ作ります。

・最もリスクが少ないプラン(投資小、利益率小)

・中くらいのリスクプラン(投資中、利益率中)

・ちょっと投資が多いプラン(投資大、利益率大)

 

 

大企業は減点主義なので、大切なことはいかに手痛い失敗をしないか、

ローリスクな企画の見せ方をできるかです。(ここが提案スキル!!)

そしてここを選ばせることで、その方向性に上司を主体的に引き込むことに成功するはずです。

あとはその上司のさらに上司、社長なのか、役員なのか、わかりませんが、

最終決裁者にプレゼンを行うための条件を確認します。

そう、これが事業決裁の条件です。

事業決裁の条件とは、最終プレゼンを行う上での条件、なのです。

なぜなら最終プレゼンはほぼ出来レースが多いです。笑

その前に、部長・事業上長レベルを完全に説得できているかで勝負が決まります。

これが大企業の新事業の実態です。

 

その条件を聞き出したら、あとは議事録にその言葉を残して、

徹底的にその条件を実現するために淡々と仕事を行います。

 

 

と、これが社内説得方法です。

やってることはくだらなく映るかもしれません。

上司の機嫌をとる茶坊主かよ、と。辟易するぜよ。と。

 

圧倒的なアイディアがあれば関係ないと。

 

でも、金がないと何もできません。

金があれば、自分たちの夢を実現できます。

そのためには何でもしますし、何を思われようとも平気です。

そして、人間社会って大企業であろうと、一般企業であろうと、

企業にかかわらず、意外と本質は同じなのだと思います。

つまり、ロマンとそろばん。

なのかなと。

 

また自分の商品はローンチできていませんが、

また世に発売したら次は是非

事業立ち上げフェーズを書きたいと思います。

それではみなさん良いお年を!

 

ちなみにアイディア創出についてはこちら

 

 

 

taitaitai.hatenadiary.jp