日々の思考の積み重ね

家電メーカー企画マンの独り言ブログ

【書評】レゴはなぜ世界で愛され続けているのか

久しぶりの書評である。

 

LEGO。レゴ。僕も子供の頃よくお世話になった。

レゴの懐かしい思い出といえば、自分で作ったレゴ作品を祖父に採点してもらっていたことだ。

救急車、飛行機、車、家、あらゆるものをレゴで作り祖父に見せるのだが、

祖父は意地悪でだいたい、60点〜70点くらいしかくれなかったが

祖父と離れる最後の日の作品は100点をくれた、という懐かしい思い出があった。

そんなレゴの近年の素晴らしい好業績の秘密を解き明かしたのが本書だ。

ビジネス本なのに、ストーリー仕立てでかなり面白く、久しぶりにビジネス書で引き込まれてしまった。

 

この本ではレゴの歴史から組織論、イノベーションの起こし方など、様々なことが述べられているが、なぜレゴがイノベーションを起こし続けられるかについて、僕が個人的に面白いと思った観点を述べたい。「レゴ 写真」の画像検索結果

 

 

1、アイディア創出について

ユニーク⑴ヒット商品は担当者の強い想いが起点

レゴでは2000年ごろから、従来のレゴの枠にとらわれない様々な商品を開発してきたが、ヒットした商品は担当者レベルの強い想いがスタートになっている。

スターウォーズコラボやレゴ型ボードーゲーム、組み立て型アクションフィギュアなど、これらはいずれも担当者の強い趣味や経験から思いついた発想であり、簡単には商品化はされていないが、商品化された折には爆発的ヒットをしている。オモチャ業界という特殊な市場でも変わらず、担当者の熱量はイノベーションを起こす必要条件であり、面白いことに内から外へのイノベーションスタイルである。

 

 

ユニーク(2)ミッションが創業以来変わっておらず、顧客への提供価値そのものである

レゴのミッションは創業当時から変わっていない。本書には以下の説明がある。

「私たちが目指したのは子供達にとって人生の準備になるおもちゃを作ることでした。子供達の想像力をかきたて、創造への意欲を引き出し、人間の生きる原動力になっている想像の喜びを育むおもちゃを提供したいと考えました」

子供の想像力を育む、というミッションが変わる必要がないのは、人間にとってそのミッションは時代が変わっても普遍的であるからだ。

レゴが強いのはこのミッションが顧客への提供価値としても色褪せないことである。

今の時代はミッションを定めること自体の難易度が高いが、企業ミッションとして変わらず定め続けていることこそが、レゴの強みであると感じる。

アマゾンのジェフベゾスも「10年後にも変わらない人間の本能を見定めることが重要」と言っているが、これから起業をする際にも、人間の変わらない本能を見定めて事業を起こすことが息の長いビジネスにつながると思う。

 

ユニーク(3)市場分析はアイディアの正しさを証明する補強材料として活用

レゴでは勿論市場分析を行うが、あくまでそれは企画の確度を高めるための手段として使っており、企画立案自体を市場分析から行ってはいない。

 

2、アイディアを精査する軸

結構面白かったのが、ここなのだが、レゴでは新しく出てきたアイディアを以下の判断軸でチェックしている。

 ⑴今までに見たことない

 ⑵間違いなくレゴ

 ⑶年間売上高200億を達成する可能性

 

 まずアイディア時点で(3)を判断軸に入れるのは通常のデザインシンキングと相反する。しかし、レゴはあえてこのポイントを入れているのである。これは200億以下の事業は行わない(収益が伴ない)という強い利益率へのこだわりを示しているということである。つまりレゴは新規事業創出の戦略目的をトップラインの向上という強い意思を持って取り組んでいるのだ。この辺りが「とにかく新しいことをやらねば!」という日本企業と一線を画するところである。

また、(2)の間違いなくレゴ、だがこのレゴの原則を社員全員が把握しておかなければこ成り立たない論点である。ちなみにレゴ初の組み立て型アクションフィギュアを発売した際にもこのレゴらしさの原則とは何かが議論に上がったが、その時には「組み立てることができる」ということであった。組み立てることができるということが子供の想像力を育むことに強く繋がっているということである。

つまり、ミッションが浸透しているからこそレゴらしさの軸が取れるのだ。

 

3、アイディアのブラッシュアップ方法

特におもちゃ業界という特殊な市場で、どのようにアジャイル開発を実現するのかと気になっていたが、レゴの場合、とにかく試作品を子供に触らせるようだ。

本書より

「開発チームは段階ごとに子供を集めて、開発中のおもちゃで遊ばせ、その様子をじっくり反応した。

どういうおもちゃが最も子供達の興味を惹きつけられるかを見極めるためだ。ここで子供たちから良い反応を得られないアイディアは次の段階には進めなかった。

(中略)

子供達の想像力を掻き立てられるかがどうかが、このテストでのポイントだった。例えばおもちゃを見せたとき、子供達が長時間飽きずに戦闘シーンを空想したり、話を作ったり、あるいはそのセットで遊んだりすれば見込みのあるおもちゃだと判断できた。

ここでもミッションが登場しているが、見極めポイントが子供の想像力を掻き立てられるかどうか、というのがシンプルにして非常に強力な仮説検証になるわけだ。

以前、任天堂のマリオ開発者の方が新作ゲームを作る際の検証をどうするかという質問に対して、

「とにかく子供に遊ばせてみる」と答えていたが、同じことである。

この方法を通じて、企画を研ぎ澄ましていくのだがレゴでは初めから使えるブロックの数やサイズ、色には制約があるらしい。これは勿論部品を共通化することで原価率を下げる目的があるのだが、この制約があることで、逆にデザイナーたちのクリエイティビティは高まるらしい。

 

以上だが、僕がこの本書で最も感銘を受けたのは、レゴ創業者の初代と2代目が何年もかけてレゴブロックを開発したストーリーであった。

当初のレゴブロックはうまくブロックのはめ込みができず、使い物にならなかったが、何年も凹凸の研究を重ねることで今の原型が出来上がった。

何気なく自分たちが遊んでいた外したりくっつけたりできるレゴの構造には長い研究の末、完成した人たちの強い根気があったからであり、「できる限り手軽に成果を求める」現代には失われている価値観である。

これほどまでに時代が流れても色褪せない価値を提供するレゴブロック。

子供に買ってあげたくなっちゃいますね。

 

レゴはなぜ世界で愛され続けているのか 最高のブランドを支えるイノベーション7つの真理