間接的アプローチはマーケティングの原理原則になり得るのか?
事業を創造するにあたり、
抽象思考と具体思考を何回も往復しなければならないが、これは
仕事筋を強める非常に効果的なトレーニングである。
たとえば、新事業サービスの顧客価値を考えるにあたり、
それが自分の理想の社会の実現に対して、正しい一手か?
ということを何度も自問自答する。
商品価値はその上位の戦略目的の達成があるわけだが、
では戦略目的の達成の上位には、自分が実現したい社会があるわけだ。
ソフトバンクなら情報革命を通じて世界を幸せにする。
メルペイなら、滑らかな社会を作る、
のように。そして自分が出す商品価値がどのように自分の実現したい社会に結びついているか、それがいつのタイミングなのか、どのターゲットなのか、など具体論を考える必要がある。
つまりこの思考の上下運動だけで、
・自分が実現したい社会を考える想像力
・戦術と戦略を考えるマーケティング思考
・お客様が具体的に体感するUX
を何回も考えるわけで、結構な上下運動思考力が身についたりする。
そして、この上下運動思考力はすごい大事なのだが、
それは自分の行動を原理原則に基づいて行動できるようになるからである。
これはあらゆる物事において必要な思考だ。
例えば幼い子供が悪さをしたら、それがなぜ悪いかを教えなければならないが、それは原理原則を子供に植え付けているわけである。
例えば自分の子供が友達を殴ってしまった。この時の叱り方で
・叩いたから叱ったのか、
・人をキズづけたから叱ったのか、
・手を出したことに我慢できなかったから叱るのか
で叱り方は異なるし、この然り方次第で、
子供に世の中の原則を覚えさせ、汎用性の高い行動を身につかせることができる。
新入社員が何度も同じミスをしてしまうのも、原理として自分がミスをする法則を理解していないからである。
たとえば、どんな会社にも経営理念は存在するが、それも同じである。
経営理念という原理原則、抽象表現があり、
それに基づいた各組織の具体的行動がある。
そして、本日の議論はマーケテイング戦略の原則に「間接的アプローチ」はなり得るか?である。
まず、間接的アプローチとは何か。
これは戦争の戦術のことで、
直接的アプローチと間接的アプローチというものが存在するのだが、
直接的アプローチは、正面切って敵を攻撃することであり、
間接的アプローチは、敵が思ってもいない方法で敵を攻撃すること
である。
この間接的アプローチは、孫子の兵法の言葉によく現れており、
例えば以下なんかが間接的アプローチをよく表している。
・最高の戦争とは戦わずして敵の抵抗を排除すること
・敵が急いで防御をしなければならない地点に出現し、敵の予想しない場所へ迅速に
軍を進めよ
・迅速が戦争で最も重要なことである。敵が準備していないところを利用せよ。
そして、衝撃的なことに、
「歴史上の決定的戦いのほとんどは間接的アプローチによって決着がついた」
というのだ。(by リデルハート)
ナポレオンなんかは間接的アプローチが得意で、常に相手が自分たちに有利となる場所におびき寄せたり、誘導して戦ってきた。
間接的アプローチはある意味リスクも高いが、
非常に強い効力を発揮する。
そして我々マーケターはその本質の原則を考え、日常的に生かすことを求められる。
では、この間接的アプローチの本質は何かというと
「相手が抵抗する心を折ってしまうこと」である。
もしくは抵抗できなくすること。
相手がそもそも戦いたくない、戦う必要がない、と思わせることができるか。
例えばあなたの上司に自分の企画を通すときに、上司の反対意見と正面からぶつかって説得することは直接的アプローチである。これはある意味非生産的であるし、結果次第で遺恨を残す可能性がある。
それよりも、自分の企画内容が普段の上司の考えと同じ方向性であるよ♡
それをほのめかす方法、これは間接的アプローチである。
相手と違った自分の考え方を相手が疑惑を感じないような形で浸透させることなのだ。
これも上司が抵抗する気持ちをそもそもなくしてしまうことを目的としている。
また、とある市場に対して打ち込む新商品があるが、それを他の企業は絶対真似できないようにすることも間接的アプローチである。
その商品を競合企業が真似をしてしまうと、自分たちの強みが足かせになってしまうとか、自分たちの事業に打撃を与えてしまうとか、そもそもやる気が出ないよういすることが相手の心を折っている。
また、例えば自分が営業であり、自社商品を売るときに、
直接その商品の価値を伝えるのではなく、その商品を使うことで日常がどう変わるか、
と説明する方がよっぽど相手に価値が響く場合がある。
恋愛でも自分の好きという感情を直接伝えるのではなく、態度で示すこと。
マーケティングが包括する範囲は幅広いが、
この間接的アプローチというのは原理原則になり得ると考えている。
そしてこの間接的アプローチを実現することは、まずは相手を知ることである。
相手が何に関心があり、どういうものの考え方をするか、それを把握しておく必要がある。また自分たちを知っておく必要もある。自分たちの強みが何で、どうやったら強みを増幅できるのか。
そして次は編集力である。
相手の欲しがる情報に合わせて自分の作戦を変化させる。ここはアートの領域でもあるが、とにかく考えるしかない。必死で考えて考え続ける。これに尽きる。
そんなことを考えていたら、やはり歴史上の戦略家たちに比べて、自分のことをはじてしまうし、もっと必死で考えなければならないな〜。