日々の思考の積み重ね

家電メーカー企画マンの独り言ブログ

【仕事術】アブダクションというイノベーションを引き起こす思考方法について

おはようございます。

最近「くるみ」にはまっているザキオでござます。

ミスチルじゃあありません、もちろん食べる方です。

産地はカナダがオススメですね。

 

今日は、「アブダクション」という思考について記述したいと思います。

おそらく多くの方はアブダクション?何それ、新たな筋トレ道具?

みたいに思うかもしれないですが、

アブダクションとは推論の思考方法の一つです。

 

アメリカの科学哲学者チャールズ・パースが確立したこのアブダクションという思考方法は、

これまで帰納思考、演繹思考、という二つの思考しかなかった世界に、

アブダクションというもう一つの思考方法を確立し、

創造的思考においてはこのアブダクションが最も重要な役割を果たす、

と彼は考えました。

つまり、「アブダクション」というのはイノベーティブな発想を

する上で大変重要な役割を果たすのです。

 

では推論の定義から、その重要性、そしてアブダクションとその引き起こし方について論じていきたいと思います。

 

①そもそも推論とは何か?

推論とは一見学術分野で使われてる仮説的思考方法のイメージであるが、

その定義から考えると、

仕事や研究、日常生活などあらゆる状況で使われる思考法である。

 

まず推論の定義からであるが、

推論とは前提と結論から構成されるもので、

前提 = 情報

結論 = 情報を元に下される判断

と定義づけられる。

 

例えば、信号が青になったから横断歩道を渡る、という動作も

前提 = 信号が赤になった/信号が赤になったら渡って良いルールがある 

結論 = 渡って良い

となり、推論が関係しているし、

マーケテイングでいうこの市場が伸びるから、ここを狙おう。というのも推論である。

また、仕事である問題に対しても問題解決も推論が活用される。

 

 

この「推論」という思考方法は、私たちが日常的に使っているわけだが、

その目的は、概ね二つに分けられる。

一つはできる限り正しい判断を下すため、そしてもう一つは新しい知識や発見を行うことで知識を拡張するため、である。

さっきの信号の例は正しく妥当な判断を下すためであるが、例えば、研究分野で新たな発見をしたり、イノベーティブな商品を生み出すこと、これは後者の目的に準ずる。

 

つまり推論とは、我々の日常生活を正しく生きるために重要であり、

また新たな知識の発見にもつながるため、重大な成果をあげることにもつながるのである。

これより推論という思考方法がいかに大切かがわかると思う。

 

そしてこの推論という思考方法は以下三つに分けられる

・演繹的思考方法

帰納的思考方法

アブダクション

 

演繹とはみなさんご存知、A=B、B=C →A=Cという思考法である。また、

帰納も複数の事象からある結論を導き出す思考法である。

 

この二つは、論理的な正しさを重視しているため、先ほどの目的でいうと

「できる限り正しく妥当な判断をする」目的に使われる。

言い換えれば正当化の文脈。

 

これらの思考は、常に正しさを追求するため、日常業務では非常に重要な役割を果たすが、不確実性を伴うイノベーティブな分野においては、あまり有効ではない。

例えば、演繹でいうと「この分野は最近非常に有望であり、他社もこの分野で業績を上げている、うちも参入しよう」

帰納でいうと「A社もB社もC社もD商品で成功しているからうちもD商品出しちゃおう」

みたいなもんである。

つまり前提知識から判断をしているため、

「前提条件以上のものは出てこない」わけですね。

前提条件=世の中的には既知の情報ですから、

これじゃあ確実性は高いが何も新しいものは生まれない。

(前提条件の情報がものすんごいレア情報であれば別ですが、例えば世の中の人の2%は鼻毛を抜くとき小指と人差し指を使って抜いているみたいな)

 

②ではアブダクションとは何か?

さてアブダクションの登場です。

では初めにアブダクションの定義です。

アブダクションとは推論の一種ですが、

「前提の内容以上のことを導き出すこと、

 つまり前提に含まれていない新しい知識や情報を与える」ことです。

若干帰納法にも近いのですが、帰納法はあくまである情報から一般化をすることですが、アブダクションは科学的仮説や理論を発案し発見を行うことです。

 

つまりアブダクションの思考法が使えたら、世の中の新たな概念や飛躍した発想ができるということです。

ここで具体的事例を見てみましょう

 

(1)ニュートンさんの事例

ニュートンさんは有名なかの万有引力の法則を発見した人ですが、有名なエピソードに木からリンゴを落ちるのをみて万有引力を思いついた、というお話があります。

これは

・事象=リンゴが木から落ちる

・演繹的思考の一般人=ものは支えられていないと落下する

アブダクション思考のニュートンさん=地球という巨大な質量は小さい質量をその表面に向かって引きつけるのである(つまり重力が存在する)

 

と考えました。これは重力という新たな存在を発見した思考であり、

演繹思考と全く違った新たな発見をしています。

この思考のプロセスは、

・リンゴがまっすぐ落ちた驚き(なんでまっすぐ落下すんねん!なんで横の方に流れて落ちたりしないのか)

・仮説の構築(地球の中心に引っ張られているのでは?

       質量があるものは互いに引き合っているのでは?)

という、一般人が見逃しがちな事実に対する驚きとそれをなぜなぜ、と想像的に仮説を考えたことから生まれたことがわかります。

 

 

(2)川上源一さんの事例

ヤマハの創業者、川上源一さんの有名なエピソードは、戦後アメリカに行った時に、アメリカ人がレジャースポーツで遊んでいるのをみて、

「日本にも必ずこういう時代が来る」と感じ、ピアノなどの楽器やボード

事業を起こしたという話があります。焼け野原直後の日本でそこまで想像を膨らませたこの思考もアブダクションだと思います。

 

・事象 :アメリカではレジャースポーツが盛んである

・一般人的思考 :アメリカすげ〜うらやまし〜

アブダクション的思考の川上源一さん :日本人もレジャースポーツを

 楽しみにする時代が確実に来る

 

ここにも事象や事実を超えた発見があります。

やはり川上さんもアメリカの風景に衝撃を受けたこと、そして、人は衣食住の最低限の欲求が満たされると、娯楽にお金を使うという仮説の構築があり、日本での確実に時代がくる、という思考につながったのだと考えられます。

 

(3)ちきりんさんの事例

ちきりんさんのブログは毎回我々に新たな示唆を与えてくれますが、彼女もアブダクションの使い手だと勝手に感じております。

 

彼女の最近のブログにあった話ですが、奨学金を返せない人が増えているという社会問題があり、それに対するちきりんさんの提言でした。

 

・事象 :いい仕事に就けずに奨学金を返せない人が増えている

・一般人 :かわいそ〜ちゃんと企業が正社員を雇うようにしてあげないと〜

・ちきりんさん :大学に入る前はいい仕事につけると思っていたのに、結局就けることができなかった学生が多数いる。この原因は大学側にある。

したがって、大学が奨学金の保証人になれば良い。

 

この提言も

・驚き(大学卒業したらいい仕事に就けるという社会的風潮と矛盾しとるやん)

・仮説A(大学が職業訓練できる場になっていない)

・仮説B(まともな教育をしていない大学が責任を取れば良い→奨学金の保証人)

であり、ここでも驚きと仮説Aというなぜの深堀、そして、仮説Bの思考の飛躍があり、完全に前提条件を超えています。

 

以上3人の事例より、アブダクションがどんなもので、その思考をすればどんな新たなものが生み出せるかをみてきました。

 

③どうやったらアブダクション思考ができるのか?

うん、アブダクションの思考や事例はわかったけど、これ、一部の特殊能力を持った人だけじゃん、と思った人が多数だと思います。

そうですね、特にニュートンさんの事例なんかはそうだと思います。

しかし、川上さんやちきりんさんのようにプロフェッショナルビジネスマンもこの思考を使える人ができます。

そして、大きな成果を起こしている人は、確実にこの思考を身につけていると思います。

なので我々ビジネスマンもトレーニング次第で間違いなく身につけられるのだと思うのです。

 

では、どうやったら良いのか?

 

個人的には以下が必要だと思います。

(1)驚きの発見

 ニュートンさんのリンゴしかり、川上さんのアメリカしかり、ちきりんさんの奨学金しかり、みんな驚いています。

ではここで何で驚けたのか、ここが一番大事だと思います。

おそらく「問題意識」を持っていたこと

が最大の要因かと思います。

問題とは理想と現実のギャップであり、ニュートンさんのリンゴ事件も

万物の原理を解き明かす、という理想と、りんごの垂直落下という、原理が明確でな現実が起こったことにより驚いたことだと思います。

我々一般人が日々問題意識を持つためには、スモールステップでいいので理想の世界を描くことが大事です。

そこから理想の世界がないと問題意識は生まれません。

逆に理想の世界があると問題意識は確実に芽生えるはずです。

 

(2)仮説構築

ニュートンさんみたいな発想ができたのは、ニュートンさんのこれまで培ってきた情報量と経験、そして創造性が絡み合って生まれたわけです。

ニュートンさんも質量の法則や宇宙の観測などのバックグラウンドがあったからこそ、万有引力を発見したはずです。

川上さんの戦後の辛酸を舐めた経験やちきりんさんのビジネス経験も仮説を作り上げる上で重要な役割を果たしていると思っています。

 

となるとおそらく、

・自分の頭の中の情報量や知識量

・それらを絡ませた思考

から発想を飛躍させることができるのだと思います。

ビジネス的に言うと、驚きの事実に対して「Why」の深堀を行い、

そこから自分の情報量を組み合わせて「So What」の発散的思考を

何度も繰り返し、仮説構築に到達できるはずです。

 

そしてその思考を行う際に、大事なメンタリティーを持っておくことが

必要だと思います。

それは、私が普段から大事に思っていることでもありますが、

世の中の原理原則は、一見関係ないものでも繋がっている

ということです。

 

これはビジネス的発想になってしまいますが、大抵のサービスは過去のちょっと変えた焼き増しであることが多く、政策も世界の事例が参考になることがあったり、ユーザーニーズの驚きの発見もマズロー欲求段階で説明できたり、問題解決も全く他業界の成功事例が参考になるケースがある。

つまり仮説構築も他の事例が参考になること、つまり何かしらの事象で起こった原理原則が使えることが多いと思うのです。

 

つまり、仮説構築も突き詰めると

「何らかの他の事例で参考になるケースはないか?」

と考えることがまずは早いのだと思います。

ここを出発点にして、あとは自分のオリジナリティーを磨いていくことで、イノベーティブな仮説や発想につながっていくのだと思います。

 

となると日常から情報収集をする際は、その歴史的背景や生まれた過程を調べ、原理原則を理解しておくことが非常に有効であると思います。

 

おそらくニュートンさんも万有引力以外の様々な現象や法則を原理原則から理解しており、その思考方法が身についていたことより、万有引力の発見につながったのだと思います。

 

 

④結論

長くなりました。くるみを食い過ぎてお腹がいっぱいです。

結論ですが、

アブダクションの思考を用いると発想を飛躍させることができる。

アブダクションは驚きと仮説構築からなり、驚きは日常の問題意識を持つことで、見つけやすくなる。

そして、仮説構築は、様々な事象は原理原則でつながっていることを理解し、「他の事例での参考ケース」を調べることが、有効な仮説を生み出す一歩だと思います。

 

もちろんこの仮説を生み出したあとは、それが妥当であるかどうかを立証していくことが必要ですが、その作業は演繹や帰納の思考を使うので、正当化の文脈になります。

なのでクリエイティブな思考はそこまで必要にはなりません。

 

以上の心構えを持って、日本から素晴らしいサービスを生み出せるよう

個人的にも頑張っていきたいところです。