日々の思考の積み重ね

家電メーカー企画マンの独り言ブログ

大企業で革新的な商品が生まれない四つの理由

どうもざきおです。

 

昨日のmakersの公演は良かったですね。

深センの進化、そして自分の起業を行う上の課題も明確になりました。

これから頑張るぞ〜!

 

さて、今日はタイトルにあるように、

大企業で革新的な商品が生まれない理由について語りたいと思う。

 

というのも自分は現在、まあ日本の代表的な大手家電メーカーで照明の商品企画を行っている。正直色々問題はあったが4年間やってきた。

 

そして、自分はこの7月から新設される

「ビジネスイノベーション本部」

という部署に異動になり、商品企画の仕事とはおさらばである。

(ちょっとさみしいよ)

 

しかし、

「大手家電メーカーの商品企画」

という職能を実体験できたことは大変価値があり、

かつ内部にいたからこそ感じた問題点を明確にしておくことが必要だ。

 

なぜなら、将来自分が起業をした際に、僕達は大手企業に勝つ必要がある。

 

そして彼らの内部の問題点を把握しておくことで勝率が間違いなく上がるからだ。

そこで今回は革新的な商品が生まれない問題点を自分なりにまとめたみた。

 

①リソースの問題

 

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そもそもイノベーティブな商品を生むため時間的・開発的リソースが圧倒的に不足していると感じた。

 

他の会社はわからないが、当社では新商品には三つの位置付けがある。

(1)低価格ボトム商品(とにかく安い!)

(2)他社対抗商品(他社よりもちょっとだけ機能が良い)

(3)付加価値商品(一応革新的な商品狙いだが大体は仕様ちょいがえ)

そして驚くことに新商品のうち(1)と(2)が大体80%を占めるのだ。

 

ダイソンやアップルみたいに商品ラインアップを絞って、デザイン特化した

(3)のみで戦う洗練された方法もあるし、自分としてはそれが理想であるが、

如何せん当社みたいに社会のインフラを作ってる、みたいな企業は、

売上のだいたい70%は(1)と(2)で構成されており、捨てることも

できない。

したがって、開発リソースも従来の延長線上の商品に投入されるため、付加価値商品を作るリソースと意識が弱いのだ。

これがハードウェアベンチャーなんかであれはひたすら(3)に専念できる。

大企業でもイノベーションを考える独立部隊を作ってしまえたら良いが、大概はむずかしい。

そもそも構造的に問題があるのだ。

 

②アイディアの生み出し方

ここも大企業あるあるかもしれないが、大きく二つある。

 

(1)トップダウン

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役職が高い人が考える商品アイディアをそのままやれ!というケース

所謂 トップダウン

これが頻繁にある。

 

現に当社の場合は、部長や課長のトップダウンでこんな新商品やって見たらどや!

面白いやろ!

ということで、商品を作るケースが多い。

これで彼らのアイディアが革新的でバカ売れするなら問題ないが、まあそうはならない。

 

なぜなら今の部長や課長の時代は右肩あがりの時代で、何もしなくても商品が売れた時代だ。(僕はある意味不幸だと思うが)

彼らは必然的にマーケティングスキルが磨かれておらず、イノベーションの起こし方もわからない。

そんな方達が提案した商品は

大体はプロダクト発想で技術的にこれができるからやろう、となっており、

ユーザー起点にはなっていないからだ。

 

今のもの溢れの時代で売れない。

 

そしてこのトップダウンを頻繁に行い新商品が爆死してしまうことが往々に大企業にはありがちだ。 

 

(2)合議制のブレスト

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続いて、トップダウンではなく自分たちで何か新商品を考えよう、とする場合はどうなのか?この場合も問題がある。正確にはその手法だ。

デザインシンキングやユーザーのインサイトを発見することは行わず、

とりあえずブレストだ。

ブレストは企画、デザイン6人くらいが集まって行う。

そしてアイディアを持ちより、何となく全員がいいね、と言うアイディアを採用するのだ。

大企業の社員全員が「いいね」というアイディアは確実に「いいね」ではない。

既存の価値観や業界からみた価値観で判断するので新しくなくて当たり前だ。

 

 

そもそも「いいアィデイアとは何か?」ここの定義づけがメンバーの中で明確になっておらず、結果、どんなアイディアを選んだらいいのかわからない。

しかも、ブレストも一回か二回で終わりであり、何回も練って練って考える、という一番頭を使うことを嫌がり、早く結論を出したがる傾向がある。

これは普段の仕事がいかに作業が多く、思考を使わなくなってしまっているかだらと思うんだ。

 

逆にちょっとひねった商品は全員の了承が得られず、まず受け入れられない。

若手社員も初めは自分のアイディアを出して頑張るが、周りに受け入れられないとそのうちやる気がなくなってしまう。結果、大企業社員と成り下がってしまう。

要するに社内にいいアイディアを生み出す仕組みができていないのだ。

もっと社外人材と一緒にアイディアを出すとか行っていけば良いと思うが、

なにやら自分たちできる、みたいな妙なプライドや村意識があるのか、

あんまり外部人材との交流は好まない。

この辺の意識も問題である。

 

 

 

③企画の承認プロセス

 

 

 

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では仮にブレストを行なって奇跡的にイノベーティブなアイディアになるかもしれない企画案が生まれたとしよう。

 

しかし、この企画案を上司を通すのがまた難しいのである。

そしてそれは大手特有の企画内容に対して各部署の部長にハンコをもらって了承を得るスタイルに起因する。

 

これは大企業ではスタンプラリーと言われている。

 

基本部長たちは忙しく、スタンプラリーを回る企画マンたちも忙しい。

いかに早くハンコをもらうかが重要だ。

そして、

・他社よりもこれだけ消費効率が良いです!

・お客さんからこんな要望があるので商品化しました!

みたいなクソつまらん商品は部長たちも理解できるので、ハンコを押せるが、

イノベーションな商品は部長たちも???で

ハンコを押していいかどうかもわからない。

 

なので、大企業のスタンプラリーにイノベーティブな商品は向いてないのだ。

もし大企業でやるなら、ひっそりとアンダーグラウンドで動いて、ある程度結果が見える時点で部長列に承認をもらうプロセスを行う必要がある。(この辺は若干テクニックがいる)

 

 

④アイディアのピボットができない

 

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そんなこんなでアイディアが決まっていざ商品化、に向かうわけだが、ここでも大きな問題がある。

それははじめに決まったアイディアをブルドーザーのごとく推進して、商品化してしまうのだ。

 

 

普通は、

まずプロトタイプを作り、ユーザーヒアリングをしてまた作り直す、というリーンスタートアップの手法が普通だと思う。

しかし、大手の場合は違う。

一度企画会議を通った商品はユーザーヒアリングを行わずに一気に商品化してしまうのだ。

なぜか?せっかく部長から承認をもらったんだから、という気持ちもあるが、

それ以上に、

ユーザーヒアリングを行って、もし市場から

 

いらない

 

となっても新商品発売計画に入っており、後戻りができないからだ。

 そもそもアイディアをピボットさせる想定でスケジュールが組まれていないのだ。

これは初めのリソースの問題と関係するところでもある。

 

また、ここは感覚的ではあるが、

当初のアイディアを変更させることは

何となく企画マン本人の気持ち的に「嫌」

なのだと思う。

この辺は大企業社員特有の、仕事に正解を強く求めており、ピボットは

何となく自分が否定された気がする、もしくは恥をかく、その辺の心理的障壁があるのだと思う。

 

 

 

■まとめ

以上、大きく四つの問題点をあげさせてもらったが大事なことは、

イノベーションを起こす方法をトップが理解し、その仕組みを組織全体に浸透させる必要がある。

そういう意味ではネスレの高岡社長が行なっている取り組みは非常に的を

得ていると思う。

 

ps.nikkei.co.jp

 

そして自分はこの大企業のアキレス腱を十分に把握し、

今後企業運営を行っていくことが重要だと感じた。

 

 

 

 

 

 

※最後に、僕が見てきた商品企画の実態の一部をお伝えする。

 

(1)低価格商品発売の経緯

 毎月一回営業マンとの会議がある。

そこで声の大きい営業マンが、「他社の方が安い商品があるやんか!そのせいで売上落ちてる!(何の根拠もない)現場も困っている!作れ!」

企画「わかりました。やります」

これだけだ。

そしてこのために、人件費の高いうちが必死こいて安い商品を作ろうとしても、

結局他社よりも安い商品を作ることができず、協力工場にプレッシャーをかける、みたいなプロセスだ。そのせいで工場が値下げに耐えきれず潰れてしまうケースがある。

 

(2)他社対抗商品

これも基本は同じだ。毎日企画には、現場の商品提案部隊やショールームの人たちから「商品要望」が送られてきて、それに対して毎日返信する義務がある。

そしてその中から意見の多いものを商品化するのだ。

これはガチだ。

ちなみに意見は大きく

・他社にはこんな商品があるからうちにも欲しい

・お客さんがうちの商品のデザインが悪いと言っているので、もっとコンパクトにしてください。

 

の二つしかない。

そう、基本的にユーザーに新しい価値を提供するのではない。他社を見て仕事をしている。さらには、自分が企画をしたわけでもないので企画マンのモチベーションが上がらない。ここも大きい課題だ。